1979年にソニーが初代ウォークマンを発売以降、ウォーキングステレオ市場が急速に立ち上がりましたが、この流れを受けて、コンパクトカセット以外にも、ウォーキングステレオの可能性を広げる試みが始まりました。そのひとつが、ラジオ専用モデルであり、もうひとつが、このマイクロカセットによるものでした。
マイクロカセットは、光学機器メーカーであるオリンパスが開発した超小型カセットテープで、当初の目的はコンパクトカセット同様、メモ録音用でした。仕様もテープスピード2.4cm/secまたは1.2cm/secと、オーディオ用としては到底使用できないと思われていました。
ところが、カセットメディアの進化により、メタルテープが登場すると、こうしたマイクロカセットでも、ある程度のハイファイ録音再生が期待できるようになり、各メーカーからマイクロカセットをステレオ化したオーディオが登場してきました。
コンパクトカセットの約1/4という抜群のスペースファクターを武器に、超小型のステレオテレコがビクター、オリンパス、アイワ、三洋と言ったメーカーから続々と発売されました(ビクターと三洋は据え置きデッキタイプも投入していました)。
そして、ソニーもステレオマイクロカセットとして、3モデル(M-1000、M-80、M-1PD)を投入しました。
このうち、M-1000(愛称:LIVELAND)は、ステレオマイクを内蔵、生録をターゲットとしたモデルでしたが、メタルには非対応でした。メタル対応の録再ウォーキングステレオとして投入されたのが、このM-1PD(愛称:2Bデッキ)と、M-80です。なお、M-80はM-1PDにラジオを追加したラジカセタイプで、スピーカーも内蔵していたため、やや大柄でした。
外観。プラスチックの外装は、やや安っぽさがあります(M-1000はメタル外装で高級感があふれていました)。
背面部。ノーマル・メタルテープ切り替えスイッチがあります。オーディオ用途として特化したため、テープスピードは2.4cm/sec固定となっています。
ステレオ化されたヘッド。
WM-701Cとの比較。
当時のマイクロカセットのミュージックテープ。(タイトルはいかにも・・)。メタルテープである点に注目。ミュージックテープはほとんど発売されませんでした。
いかにメタルテープをもってしても、マイクロカセットでの周波数特性は上限が10KHzどまりと、この時点ではいまだハイファイ再生には程遠いものでしたが、個人的にはコンパクトカセットに起きたイノベーションがマイクロカセットに引き継がれていくものと期待していました。
しかし結局、ソニーではマイクロカセットデッキも、ウォークマンの名を冠したモデルも発表されずじまいでした(海外にはあったようです)。またオーディオの進化は以後デジタルに急速に移行していき、コンパクトカセットの後継はマイクロカセットではなく、DATに託されたのでした(この流れも結局ソニーのMDならびにシリコンオーディオによって終焉を迎えるのですが)。
アナログテープメディア最後の規格は、メモ録音機器として現在もかすかに生き残っています。
以上です。