カセットウォークマンの話題を期待していた方すみません・・
ソニー製ウォークマン専用の楽曲管理ソフト「Music Center for PC」の利用にあたり、WindowsPCの標準楽曲管理ソフトである「Windows Media Player」との連携が思ったより手こずったことから、自身の備忘録を兼ねて記事にしてみました。
Music Center for PCはx-アプリの後継アプリに位置づけられます。このアプリもソニー製のご多分に漏れず、初期バージョンはx-アプリのデグレード版ともいえる、過去最高レベルに使いにくいアプリでしたが、度重なるアップデートにより歴代楽曲管理ソフトの中でも最良クラスの出来になっています。
個人的には、シンプルなデザインと操作性が気に入ってます(おまけ機能はあまり使わない派です。ちなみにアーティストリンクは一度も使ったことがありません)。また、ミュージックサーバとしても機能します(対応機器を所有していないため未活用)。FLACやWAV形式でファイルを取り込んで、高音質なホームオーディオライブラリも作成できます。HDD容量は食いますが(FLACで約500MB、WAVで約700MB/CD一枚)、昨今のHDDスペックから見れば誤差のようなものです(嘘)。ひとつ不満をいうと、(ソニーの問題ではないのですが)CDリッピング時などに参照される楽曲データベースである「graenote」のデータの統一性の問題があります(例えば、CD4枚組のアルバムデータを取得する時、CDごとに微妙にアルバムタイトルが違うなど)。このデータベースはどこでどういう管理がされているのか・・
なお、最近のウォークマンはPCに接続すると外付けストレージとして認識され、ファイルマネージャー上でD&Dで楽曲転送ができるものがほとんどですが、私のようにWAV形式でライブラリを構築していると、転送時にフォーマット変換(データ圧縮)できる楽曲管理アプリは必須になります。
ただし、このMusic Center for PCは標準楽曲管理ソフトとして利用する時に一つ問題があります。それは(ウォークマン専用の楽曲管理ソフトなので、当たり前といえば当たり前なのですが)スマートフォンに楽曲が転送できないのです。ウォークマンへの転送を考慮しなければ、他の選択肢がありますが、ウォークマンユーザとしてはやはりMusic Center for PCで楽曲管理したくなります。
そこで、Music Center for PCの楽曲データをWindows Media Playerと連携させることで、ウォークマンとスマートフォンで同じWAV形式ライブラリを使えるようにしようと思い立った次第です。
Music Center for PCの楽曲データをWindows Media Playerと連携させるもっとも簡単な方法は、Music Center for PCの楽曲データ保存フォルダをWindows Media Playerのライブラリ参照フォルダに設定することです。
Windows Media Playerのファイル>ライブラリの管理>音楽で表示されるダイアログボックス(ミュージックライブラリの場所)から、対象のフォルダを設定するだけの簡単操作です。
私も最初はこの操作ですべてOKと思っていました。ところが・・・
「Windows Media Playerで認識された楽曲(アルバム)が妙に少ない」ことに気づきました。
そして、リストの最後に「不明」という謎のアルバムが出現・・いやな予感が過ります。
そして、その不明のアルバムをダブルクリックすると・・・
数百曲が一枚のアルバムに登録されているという悲惨な状況に。
そしてよく見ると、その数百曲はWindows Media Playerで認識されなかったアルバムであることが判明。どうしてこうなった・・
なにが原因なのかはじめは分からず、いろいろググってみたのですが、どうしても原因が特定できず、一時は行き詰まりました。
ある時、なにげなくWebを見ていると、思い当たる情報に出会いました。
・WAVファイルのオリジナルフォーマットは楽曲ごとのタグ情報が未定義で、のちにタグ規格が設定された
自分のライブラリはすべてWAVファイルであることから、Music Center for PCのライブラリに保存してあるデータの楽曲毎のファイルプロパティを確認すると、
・Windows Media Playerで認識された楽曲ファイルはすべてプロパティ>詳細で楽曲情報(タイトル、アルバム名など)が確認できた
・Windows Media Playerで認識されなかった楽曲ファイルはプロパティ>詳細で楽曲情報が空白になっていた
これだ・・ようやく原因が判明しました。
しかしなぜ、このような違いが発生したのか?
よく見ると、不明に分類されたアルバムが、すべて最近リッピングしたアルバムであることに気づきました。ここで一つ思い当たったのが、Windows Media Playerで認識されなかった楽曲はすべてMusic Center for PC経由でリッピングしたアルバムだったのでは、という憶測です。(ちゃんと記録をとっていたわけではないので、本当のところは分からず)
そこで再度Webで情報をググった所、ソニーの昔の楽曲管理ソフトは、楽曲単位のタグを記録していたのが、Music Center for PCではその機能が省略されたとの記載が見つかりました。
どうやら、自分のライブラリは過去にSonicStageなどでリッピングしていたデータと、Music Center for PC導入後のデータが混在していて、かつWindows Media Playerでは楽曲インポート時にファイルのプロパティを参照するために、こうした状況が発生した、というのが結論と思われます。
それでは、これらのMusic Center for PCでリッピングしたWAVファイルのWindows Media Playerインポートはあきらめる(あるいは全楽曲ファイルにプロパティを記入する)しかないのか?
あれこれ試行錯誤した結果、一つの対処方法に行きつきました。
・とりあえず今の数百曲が登録された不明アルバムはWindows Media Playerから削除(ライブラリからのみ)
・ファイルマネージャー上でMusic Center for PCのリッピングデータのアルバムフォルダを(アルバム単位で)ドラッグし、Windows Media Playerのアルバムライブラリ画面上にドロップ
・Windows Media Playerがしばらくネットワーク上のデータを参照した後、アルバムが登録される。
要するに、タグ情報がない楽曲で構成されるアルバムフォルダが多数存在する上位フォルダを登録しようとするとおかしくなるが、アルバム単体のフォルダならなんとかインポートに対応できるようです。ただ、この手法で登録した場合でも、時々以下の状況が発生します。
・正しいアルバムとは別に、やはり不明アルバムが登場する場合がある。
・また、同じ楽曲が含まれる他のアルバム情報が登場する場合がある。
・これらのフォルダの中身を覗くと、本来のアルバムの楽曲一式が、曲単位でバラバラに上記の各アルバムに登録されている。
これまた推測ですが、Windows Media Playerがタグ情報のない楽曲を登録する時、ネットワーク上の楽曲データベース(ms独自DBであるxboxlive)の情報を元に登録していると思われます。このDBにマッチングをかける際、曲ごとに最初にマッチしたアルバム情報に紐づけてしまうのではないか、と思っています。なので、本来であれば一つのアルバムとして認識して欲しいところが、複数のアルバムに分かれてしまう現象が発生するのではないかと推測しています。
幸い、Windows Media Playerには、ライブラリ上で複数のアルバムをマージする機能があります。間違ったアルバムを、正しいアルバム上にD&Dすることで、マージが完了します。ただし、ここでも注意があり、楽曲はマージしてくれるが、アルバム内での正しい位置や楽曲情報には修正されません。よって、時にはトラック1の楽曲が、6番目に来ていたりします。
ただしこれもWindows Media Playerで簡単に修正できます(手作業になりますが)。 ここにようやく、Music Center for PCとWindows Media PlayerでWAVファイルライブラリの共有が実現しました。。。疲れた。
ちなみに、Windows Media Playerのアルバム一覧画面でアルバム画像が表示されない(画像の代わりに音符マークになる)場合、自分でアルバムアートを貼り付けられますが、これがまた裏技的な操作(まず最初に貼り付けたい画像をブラウザやファイルマネージャー上でマウス右クリックコピーし、その後WMPのアルバム一覧画面上の画像未設定アルバム(音符マーク)の上で右クリックするすると、「アルバムアートの貼り付け」というメニューが現れる。おそらくこの操作以外では不可)なので、合わせてメモしておきます。
・・と、ここまでやった後に知ったのですが、残念ながら最新のWMPはデバイスへの転送時にファイルフォーマットを変換する機能が無くなっているようです(オリジナルフォーマットで転送される)。これだと自分の場合WAVファイルとなってしまうため、スマートフォンのストレージが一瞬で消費されます。これではライブラリを共有する意味なかったかも・・他のソフトを探すか・・
昔からのネットワークウォークマンユーザであれば、ソニーが過去に提供してきたウォークマン用楽曲管理ソフトがいかに〇〇であったかはよくご存じとは思いますが、せっかくなのでここに過去の黒歴史(提供終息)を紐解いておきたいとおもいます(Winodws版のみ)
・OpenMG JUKEBOX・・・メモリースティックを記録媒体としたATRAC3専用再生機「メモリースティックウォークマン」と同時に登場した、ソニー最初期のデジタル楽曲管理ソフト。CDからリッピングする際のフォーマットはATRAC3となり、他のフォーマットではリッピング不可能。さらに、CDリッピングデータにも著作権管理データが付与され、ウォークマンへの転送回数制限(チェックイン・チェックアウト)が存在するという徹底した著作権管理システムが搭載された。当時のソニーの立場上やむを得ない選択だったかも知れないが、すでに個人でMP3へのCDリッピングが広まっていた当時、メモリースティックウォークマンのMP3再生不可(当アプリでATRAC3に変換・転送すれば再生可能)と相まって、完全に「ユーザ不在の誰得」仕様だった。この戦略ミスが初期のvsiPod戦争におけるソニー大敗を招いた。
・SonicStage(SS)・・iPod+iTunesのリッピングフリーの破壊力に抗うことの無意味さに気付いたソニーが、このソフト(ver.3.x以降)から非ATRAC世界へ軸足を移す。CDリッピングデータが自由にハンドリングできるようになり、そこそこ使えるようになった。
・CONNECTPlayer(CP)・・打倒iPodを実現すべく満を期して登場した「Walkman Aシリーズ」向けに開発・提供された、伝説の〇〇アプリ。アーティストリンクなどの新機軸も盛り込んでいたが、裏で何かしているか?と思うほどの動作の重さと、様々なバグを内包したままでリリースされ、あまりの〇〇加減に、リリース直後からほぼ月一回のペースでアップデートがなされたが、根本解決には至らず。これはひどい。。
・SonicStageCP・・上記CONNECTPlayerが余りに〇〇だったため、急遽SSを改良、CPの対応機種を引き継ぐ形で誕生。ようやくAシリーズでまともに使える楽曲管理ソフトが手に入る。その後程なくして、CPは提供終了となる。
・SonicStageV・・SonicStageの最終形。UIが洗練され、さらに使いやすくなった。このあたりで楽曲管理ソフトとしての基本的な不満はほぼ解消した。
・x-アプリ・・SSの後継アプリとして誕生した、ウォークマン向け楽曲管理ソフト。ATRACをサポートする最後のアプリとなった。Meda Goというもう一つの楽曲管理ソフトの登場により、ウォークマンの楽曲管理の方向性が不明確になり、ユーザは困惑した。さらに、Music Centerの登場と共に終息するが、移行期間が異常に短く(MCが登場してから約3か月でx-アプリ内でのオンライン楽曲購入が不可となり、x-アプリ新規ダウンロードも終了)、これまたソニーお得意の誰得技を繰り出した。
・Media GO・・ウォークマン以外の機器への転送にも対応する、というかウォークマンの世界とは独立した、多機能楽曲管理ソフト。元々はPSP向けに開発されたアプリだが、ウォークマンの楽曲管理ソフトとして推奨されていた。こちらもMusic Centerの登場と共に終息。
かなり辛辣に書きましたが、iPodに先駆けてメモリースティックウォークマン「NW-MS7」が登場した当時、個人的にはサービスやデバイスの先進性に感銘し、大きな期待を抱きました。その一方、ユーザビリティを軽視した著作権管理戦略は失望を禁じ得ませんでした(さらにNW-MS7は本体価格45000円と高価だったため、当時は購入に至らず)。
その後、iPod+iTuneとの戦いに敗れ、一時期はウォークマンブランドの存在感が薄くなりましたが、CDリッピングにおける著作権保護方針を変えたことで息を吹き返しました。(個人的には一刻も早くこの方針転換をして欲しかった)
しかし、その後もCPの大失敗をはじめ、x-アプリとMedia GOの微妙な共存状態や、MusicCenterへの強制移行など、こうしたソフトウェア・サービス辺りはソニーはどうも上手くないと思わざるを得ません。
なおデバイスとしてのウォークマンは音楽再生機の基本に立ち返り、AVメーカー得意分野(高音質、ワンセグ、NCなど)での差別化訴求で、2010年についにAppleから国内市場トップシェアを奪回します(2005年のAシリーズ+CPの大失態がなければ、もう少し早く奪回できていたかも)。
その後、Appleが2017年に携帯音楽再生機からほぼ撤退(2020年現在はiPhoneをベースとしたiPod touchの1機種のみ販売中。スマートフォンの高機能化に伴い、携帯音楽再生機の市場が縮小したため、Appleは早々に見切りをつけたともいえます)したことで、2020年時点で国内市場シェア約7割を獲得。ウォークマンブランドとしての栄光を取り戻した感があります。次はぜひソフトウェア・サービスでソニーの本気を見せてほしいと思います。
以上です。
2020.4.23