雑感ノート(2)TPS-L2以前のヘッドフォーンオーディオについて

私は、ウォークマン1号機であるTPS-L2より前に「ヘッドフォーンオーディオ」を見ています。いつ頃だったか、はっきりは覚えていませんが、恐らくTPS-L2登場の2年ぐらいは前だったのではないでしょうか。
因みに「ヘッドフォーンステレオ」と言わず「ヘッドフォーンオーディオ」と言ったのは、使用するヘッドフォーンはステレオ(両耳)タイプだったのですが、音源がステレオだったかモノラルだったかをはっきり覚えていないからです。
しかし、単三乾電池(4本)で動作し、片手で持って操作ができ、録音機能とスピーカーがなく、そしてステレオヘッドフォーンジャック(大型)がついていましたので、まぎれもなく「ヘッドフォーンオーディオ」と呼んで良いと思います。
因みにセットサイズが大きかったので、TPS-L2では本体に入れることが出来なかった大型ヘッドフォーンジャックも無理なく本体に入っていました。

このセットは、当部門のベテラン企画担当者が持ってきて(借りてきて?)見せてくれたものですが、松下電器(今のパナソニック)製のハンディ型カセットテープレコーダーを改造したものでした。ハンディ型とはいっても、高さは20センチ近くあり、幅も10センチぐらいはあったと思います。
これは、どこかの録音スタジオ関係者がどこかの試作会社に依頼して作った、数台のうちの1台とのことでしたが、作成した会社、依頼した録音スタジオがどこなのかについては確認しませんでした。なぜなら、「これは一般商品には成り得ない」と思ったからです。

そして当然、TPS-L2のプロトタイプを見たときも、私は売れるとは思いませんでした。
しかし、TPS-L2は大ヒット商品になりました。
それは、まぎれもなく盛田さんの先見性の賜物だと思います。
では、もし盛田さんがこのときの改造品を見たとしたら、どう思ったでしょうか。
これはあくまで私の想像ですが、恐らくあまり興味を示さなかったのではないでしょうか。それは、サイズや質感が今一つだったということもありますが、それ以上に、時期が少し早すぎたと思ったからです。盛田さんがTPS-L2のプロトタイプを見たのは、カセットテープの生産数量、その他の状況から、多くの人が録音済みテープをたくさん保有するようになった時期だったのではないかと思っています。
そして盛田さんは、すでにそのことに気付いていたので、再生専用に特化したTPS-L2を見たとき、咄嗟に「これは売れる!」と閃いたのだと思います。

因みに、TPS-L2を発売した後、「私はすでに同じような物を作って楽しんでいる」といったような投稿が、ソニー宛に数多く寄せられたといううわさを聞いたことがありますが、もしそれが事実だとしたら、実際にはその何倍、何十倍もの人が同じようなものを作って、楽しんでいた可能性があります。
このことから考えても、TPS-L2の登場時期はジャストタイミングだったと言えるのではないでしょうか。

(談:S様)

 

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