雑談Vol.5

ライバル機の系譜(1)

Panasonic RQ-S80

1991年11月発売

25,500円(税別)

 

1979年にソニーが初代ウォークマンを発売して、ウォーキングステレオ市場が確立したと同時に、他の家電メーカーも次々とその市場に参入してきました。

そんなメーカーの中でも、パナソニック=松下電器はナショナルブランドの頃から、東芝やアイワと同じくいちはやくウォーキングステレオ市場に参入したメーカーのひとつです。

ソニーのブランド「ウォークマン」に対抗して、当初「Way」のブランド名称(サザンがキャラクターでした)をつけていましたが、あまりにもウォークマンの名称が広まりすぎたためか、いつしかアルファベット「S」で始まる型名のみの商品となっていました。ガム型充電池も、当初はソニーとは違う独自規格でしたが、いつのまにかソニー規格と同じになっていました(^^;。

パナソニック機の特長は、なんといっても「技術」へのこだわりです。特にライバル社であるソニーに対して、常に上にあろうとする執念を感じます。

特に、再生の要であるヘッドについては、1μmの超ナローギャップヘッドやアモルファス、ラミネート(積層)コアヘッドなど当時の最先端技術を採用、またドルビーC搭載についても積極的に取り組んでいました。

ヘッドフォン部にも特長があり、ソニー機のような特殊な形状のコネクタではなく、一般的なステレオミニプラグと互換性のある4極プラグを採用していたため、特別なアダプタなしで既存ヘッドフォンが利用可能(ただし機種によってはノーマルヘッドフォンだと一瞬操作信号ノイズが乗るのが残念。S80も該当)でした。

そして、ヘッドフォンリモコンの操作系も独自のワンボタン(ボタンを長押し、2連、3連などの押し分けで操作)を採用、これは個人的にはかなり気に入っていました。(ひとつのボタンの位置さえつかめば、一通り操作ができる)ただし、AMSなど、後年の多機能化には対応できなかったようで、末期モデルでは複数ボタンを採用していました。さらには、液晶表示もいち早くドットマトリックスを採用、グラフィカルな表示を実現していました。

今回はそうしたパナソニック機のなかから、最盛期のモデルであるRQ-S80をご紹介します。

 

グロッシーな塗装が高級感を演出。カセット確認窓はない。

 

本体の操作系は裏側に集中。

 

ドルビーC対応、12層積層コアヘッドなど、歴代パナソニック機の中でも最も音質面に力が入っているモデルのひとつといえるでしょう。

表面の塗装も二重塗装によるグロス仕上げとなっており、高級感を演出しています(ただし指紋が目立つ・・・)

現役時代、このモデルの2つ前のモデルである、RQ-S5Vを使用していたことがありますが、当時この機械が移動使用時あまりにも音ゆれするため、我慢できずまたソニー機に戻ったことがあります。このS80では、音ゆれはかなり改善されており、ほとんどソニー機並の音ゆれ耐性といえると思います。

また、特長機能として、ASC(アメニティ サウンド コントロール)イコライザがあります。これは、ソニーのEXD.B.Bに相当する低音強調機構「S-XBS」をベースに、利用シーンに応じた3つの音質を選択できる機能で、さらに「LIVE」というリバーブサラウンドも搭載していました。また、リモコンの液晶表示に、現在選択したイコライザのグラフィックを表示する機能がありました。

ドットマトリックスによるグラフィカルな表示を実現。写真は再生中のアニメーション。その他操作表示(PLAY、FFなど)や、ASCイコライザーのグラフィック表示も可能。黄色のボタンが、イコライザ切り替えボタン。右側メッキのボタンが、本体操作用ワンボタン。

 

ヘッドフォンの裏に、ワンボタン操作のガイドを表示。

 

一方、同時期のソニー機のような新機軸・便利機能(AMS、A面おしらせ、ヘッドフォン交換機構)には対応しておらず、この点ではソニー機が先行していました。

このモデル最大のウリといえる注目のヘッド周りですが、パナソニック機の特長ともいえる「ヘッド固定&テープパッドリフター」方式を採用しています。すなわち、ヘッドとテープは常に接しており、ヘッドを固定することでヘッド部ガタツキによる音質への影響を最小限にとどめ、かつ早送り・巻戻し時などの再生時以外はテープの裏のパッドを持ち上げることでテープ走行の抵抗を下げて実現するという仕組みです(個人的には、いくらパッドを持ち上げていても、テープとヘッドが常に接触しているのはどうかな・・・と思いますが)。

ヘッド周りアップ。ヘッドを取り囲む金属製のガードが、パッドリフター。

 

パナソニックの12層ラミネートコアヘッドは、ウォーキングステレオとしては最高レベルの周波数特性15〜21,000Hzを実現。音質は一言で言えば「なめらか」で、特に高音の再現性は同時期のソニーのEXアモルファスヘッドを上回っていると感じられます。

カセットテープがもっとも輝いていた時代の、パナソニックがその技術を存分に投入したモデルでした。

型名:
RQ-S80
本体寸法(WxHxD):
107.4×76.1×20.4mm
重量(充電池含む):
約153g
電源:
付属ガム型充電池
  単三乾電池×1
電池寿命:

マンガン電池約2.8時間、アルカリ電池約7.6時間(単三乾電池)

約3.2時間(充電式電池)約12時間(アルカリ乾電池+充電池兼用)
最大出力:

ヘッドホン出力5mw+5mw

ノイズリダクション:
DOLBY-B/C
  ASC搭載
付属ヘッドホン:
液晶リモコン付属
  オートテープセレクタ・オートリバース機能搭載

 

以上です。

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