ウォークマン開発ストーリー Vol.1

WM-701C(1988)

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WM-701Cはウォークマン誕生から10周年のモデルとして企画・製造されたモデルです。

当時、当製品のプロジェクトに与えられたテーマは「10周年にふさわしいモデル」だけでした。 フルリモコン、ドルビーCはすぐ決まりましたが、それだけでは「10周年モデル」とは言えません。 そこで、当時ソニーで最も優れていたデザイナーの一人(と私は思っている)にデザインをお願いしました(WM-2の原型となったテープレコーダーをデザインした人です)。

そして誕生したのがWM-701Cのデザインです。

素晴らしかったのですが問題がありました。それは、今まで唯一残されていたステレオミニジャックの入るスペースがなくなったことです。 でもこのデザインは何としても実現したいと思いました。

そこで考えたのが9極ジャックでした。どうせ特殊ジャックを起こすなら、まず(当時多かった)、落下によるジャックの破損を 減らすことを考え、背を低くしました。そして「リモコンまでを本体」 と考え、将来、液晶表示やAMSスイッチなどなどを設けられるように9極としました。

さらにリモコン先端にヘッドフォン用ミニジャックをつけることで、別売りを含むほぼ全てのヘッドフォンが使えるように考えました。ただし、WM−701Cに関しては、本体と統一されたデザインのリモコンを採用することにし、ヘッドフォン付け替え機能は見送りとしました(こちらについては後のモデルで実装されました)。

因みに、9極ジャックで多機能リモコンを実現するには、まずヘッドフォン用に3端子、液晶表示その他の機能に4端子を使います。従って、再生・早送りなどの動作モードは残りの2端子で行わなければならず、専用ICの開発が必須となりました。

開発は順調に進み、日程的にも間に合う予定でしたが、完成直前にこのICに問題が発生。WM-701Cの発売を遅らせるしかないように思われました。しかし当時の上司は「発売日の延期は絶対NG!」と厳しい一言。そこから模索が始まりました。

そして「WM-701Cのリモコンには液晶は無い、ならば使っていない液晶用の端子を動作モードスイッチに直接つなげば、ICを使わずに動作を実現できるのでは」と閃きました。すぐに設計を変更し、なんとか発売日を守ることができました。

デザイン実現のために導入した9極ジャックが、思わぬ救世主となりました。なお、このICはその後不具合を解消し、次の機種から無事導入できました。

(談:S様)

 

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