ウォークマン開発ストーリー Vol.3

WM-2(1981)

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イメージデザインが生んだ革命的メカニズム

WM-2のメカニズムは、実は次期プレスマン(ハンディーテープレコーダ)用に開発されたものでした。

それは1978年(TPS-L2以前)、新聞社が主催した工業デザインコンペに、未来のプレスマンとして出品されたイメージデザインから始まりました。
ただし、当時の技術では、イメージデザイン通りのものをつくることはほぼ不可能でした。
なぜならそれは、当時の高級テープデッキに採用されていた、3モーター方式に近い駆動メカと、フェザータッチ(電気スイッチ)ボタン操作を想定しており、どちらも乾電池で動かすことは難しかったのです。
しかしながらそのデザインは、今までのハンディテープレコーダの概念を変えた斬新なものでした。

その後、モックアップ(模型)はデザイン室に展示されたのですが、それを見たメカ設計者がそのデザインに惚れ込み、なんとか実現できないものかと検討を始めました。そしてついに、電気スイッチの代わりに、テープ駆動モーターの力を借りたメカニカルフェザータッチボタンと、そのリンクにより既存方式のメカニズムを動かす方法を思いつきました。これによって、たった一つのモーターを使ったメカでありながら、3モーター方式のような、フェザータッチ感覚のボタン操作を実現したのです。

因みに、イメージデザインでは、電気スイッチを想定していたので、配線次第で、蓋側に操作ボタンを設けることも出来たのですが、あえてメカ側にスイッチを配置したデザインを提案していました。
このデザインが、設計者のメカニカルフェザータッチボタンの発想につながり、革命的なメカニズムが誕生したのです。

そして数か月後、試作メカが完成し、事業部長に見せたところ「これぞ次世代プレスマンだ」と感激し、すぐに会長に見てもらうことになりました。
このころ初代ウォークマンであるTPS-L2はかなり売れていましたが、それでもテープレコーダの中の1機種という位置付けで、社内での主役はやはり録音再生機のプレスマンだったのです。
しかし、これを見た会長は「これは次期ウォークマン専用のメカにしよう」と一言。

しばらくして、このメカを使ったウォークマン2号機が企画され、PL(プロジェクトリーダー)、電気、メカなどの担当が選出されて商品化がスタートしました。
(なお、この時からウォークマンに会長が関与することは無くなり、他のテープレコーダ同様、全て事業部に一任されるようになりました)。

こうして、歴史的ウォークマンであるWM-2が誕生しました。優れたデザインは「人を動かす力」だけでなく「運」も持っていることを強く感じたモデルでした。

(談:S様)

 

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