ウォークマン開発ストーリー Vol.9

WM-507(1990

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小型ガム電池の採用

初代ワイヤレスウオークマンWM-505は、ワイヤレスレシーバー(受信機)にもウォークマン本体と同じガム電池を使っていました。ただし、元々本体のカセットケースサイズを目指して規格化した形状のため、受信機に採用した時どうしてもレシーバーの大型化を招いていました。
また、ワイヤレスレシーバーは本体より消費電流が少ないので、もう少し容量の小さいガム電池でも問題ないと思いました。容量の小さいガム電池は、現状のガム電池の長さを短くするだけで作れます。そして、ガム電池が短くなれば、ワイヤレスレシーバ―自身の寸法も小さく(短く)、そして軽くすることが出来、より使いやすくなります。
実は、WM-101の時にガム電池を共同開発したメーカーが、共同開発したサイズ以外にもいくつかのサイズバリエーションを開発・商品化していました。
そのうちの一つが、まさに標準サイズのガム電池を長さを約19ミリも短くしたモデルでした。
さっそく、この小型ガム電池を採用したワイヤレスウォークマンが企画されました。
しかし、ガム電池の形状が2つになった事で、充電器も2つ用意する必要が出てきました。そうなると、コストが大幅に上がってしまいます。そこで、コストアップを抑える方法は無いものかと考えた末、どちらのガム電池にも使える、共用充電器(コンパチ充電器)を作るというアイデアが浮かびました。
さっそく、長さが違う2つの電池を受け入れるメカニズムの検討を始めました。

従来のガム電池用充電器は、充電器上面の電池収容部(ガム電池が乗る場所)より10ミリほど下にプリント配線基板があり、そこにプラス端子とマイナス端子(直径1ミリほどのバネ)がそれぞれ接点として上面に出ています。そこで共用充電器は、まずプラス接点は共通接点として固定し、さらに従来型ガム電池収容部の途中にスリット穴をあけ、小型(短い)ガム電池用の追加マイナス接点をそこから飛び出す形とし、従来型ガム電池を使うときは、この接点がガム電池本体に押されることで充電器の中に入るという機構を考えました。

この機構実現にあたり、追加マイナス端子は、基板上の既存のマイナス端子が半田付けされている場所から、スリット穴まで斜めに端子を延長し、さらにそこから端子を上に曲げてスリット穴を通して表に出す構造としました。この傾斜により、追加マイナス接点は、従来型ガム電池のときは(電池に押されて)スムースにケースの中に入り、短い電池のときは飛び出した端子部がスリットに寄りかかるようなような形となって、電池をしっかり保持することが出来ました。
因みに、この二つのマイナス端子は基板上の取り付け場所を同一にしたことで、V字状に曲げた一本の接点ばねで造ることができました。

これらの工夫により、共用充電器は今までの充電器のプリント配線基板と、ケース下部分をそのまま流用出来るようになり、新しく作るのは、スリット穴を追加したケース上面と、マイナス接点バネだけとなり、わずかなコストアップで実現しました。こうして出来上がった「コンパチ充電器」により、小型ガム電池の採用の目途が立ち、WM-507の小型レシーバーが実現しました。また同時に、小型ガム電池も新商品「NC-4WM」として発売されました。

(談:S様)

 

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